この世の息が
暑い暑いと言いながらも9月に入りました。
昼間は35℃を越える猛暑でも、夜には少しづつ気温が下がり始めているのを肌で感じます。
もうひとつ、日が短くなった気がします。
夕刻、蚊取り線香を炊きながら庭の水撒きをしていると、
先日までの夕刻とは明らかに違う気配があり、
同じ時間で水撒きしていても、日の明るさが違っています。
日の傾く速さが、どんどん海へ近づいているのです。
道理で水撒きの対象物が見えにくくなってきている。(鳥目か・・・)
ジジジジジッジ リリリリリリリリ キッキッキッキッキッ
夏の夕刻には聞かなかつた虫の声も始まりました。
9月8日には二十四節季の白露となり、草花に朝露が降り、
ススキの穂が顔を出し始め、空が高くなっていきます。
日に日に秋を感じられますね。
この夏はどうでしたか?
思い残すことなく夏を過ごしましたか?
わたしは残したかった思いもありますが、残したくない思いも残ってしまったという、
まぁ、優柔不断男ですから。
わたくしのような優柔不断男は、即断決断してしまう方ががいいのかもしれません。
即断即決においても、思い(思い出)を残すことは重要なことかもしれない・・・
先日、会社で読んでいた本に、恥ずかしくも涙してしまいました。
[おしどり夫婦]の歌人として知られた河野裕子さんとご主人の永田和宏さん。
奥様の河野さんは乳がんを患い、ご主人の永田さんは妻の最後を看取ることになったそうです。
そんなお二人が40年間にわたって相手への思いを詠んだ歌が、
[たとへば君 四十年の恋歌]
河野さん(奥様)は亡くなられたのが2012年の8月のこと。
亡くなられる前日まで口述筆記で四首の歌を残しておられます。
わたくし、最後の一首に、思わず・・・
手を伸べて あなたとあなたに触れたきに 息が足りない この世の息が
まさに絶唱。
河野さんは亡くなる寸前に、歌を使い、形に残る想いを残されたのだと思います。
最後の 『この世の息が・・・』があまりにも切な過ぎます。涙・・・
我が家も毎年お盆を迎えておりますが、お寺さんの駐車場には桜の木があり、
この下に車を停めると、ミンミン ジージーと蝉が元気よく鳴いています。
この木のどこかに蝉がいます。分かりますかね?
拡大しますね。
蝉は羽化してから2週間が寿命だと言われています。
(種類によっては寿命は違い、写真のアブラゼミは約30日くらい)
雄は求愛行動のために精一杯鳴き、より多くの雌を集めることが出来ただろうか?
写真を撮ってから3週間が過ぎようとしている。
羽根は擦り切れていないだろうか?
パートナーは見つかったのだろうか?
すでに死んでしまった。
野鳥に襲われてしまった。
お彼岸の頃にはヒグラシの『カナカナカナカナカナカナカナカナ』がまだ聞こえるのだろうか。
生き物たちは毎日を精一杯生きている。
過去も未来も考えずに、“今”を精一杯生きている。
この世の息がいつ途切れるかもしれないのにだ。
今のひと呼吸に感謝しよう。
きっと次に来る呼吸にも感謝しよう。